障害の種類によって異なるユーザー体験と配慮のポイント

(2025.5.26)

障害の種類によって異なるユーザー体験と配慮のポイント:目次

障害の種類は“デバイス体験”に影響する

例えば、自治体・公共機関のWEBサイトは、住民すべてに情報を届ける“公共の窓口”です。しかし、利用者の中には視覚・聴覚・身体・認知など様々な障害を持つ方々がいます。

  • 視覚障害:画面の情報を音声で読み上げて利用
  • 聴覚障害:視覚情報が主な手がかり
  • 運動障害:マウスや細かい操作が困難、音声やキーボード中心
  • 認知障害:理解や判断に時間がかかる、構造が複雑だと混乱しやすい

本記事では、それぞれの障害特性によって異なるユーザー体験と、WEB担当者として押さえるべき配慮のポイントを整理します。

視覚障害:画面が見えない、色が見えにくい

視覚障害の主な困難

視覚障害と言っても、例えば、色の違いが分からない、テキストの文字が小さくて読めない、視力がほとんどないなど、人によって抱えている問題はさまざまです。

  • 画像やボタンの意味が伝わらない
  • 色の違いを判別できない
  • テキストを正しく読めない

視覚障害を持つ方への配慮のポイント

視覚障害を持つ方への配慮として、まずはHTMLを意味に沿って正しく構造化することが大切です。 例えば、見出しタグを文書構造に合わせて使い、リストやナビゲーションにも適切なタグを使うことで、支援技術がページの構造を正しく読み取れるようになります。また、グラフなどは色のみで情報を伝えるデザインではなく、ラベルやマークを併用すれば、色に頼らずに情報を伝えることができます。

  • HTMLの構造をセマンティックに
  • 画像に代替テキストを設定
  • 色に依存しない情報提示

活用される支援技術

代表的な支援技術としては、スクリーンリーダーのNVDA(Windows)、VoiceOver(Mac/iOS)、JAWS などがあげられます。また、ブラウザの表示や文字の拡大機能なども支援技術と言えるでしょう。これら支援技術は適切なマークアップのもとで機能するのでHTMLを正しく記述することが非常に重要です。

  • スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)
  • 拡大鏡機能・ブラウザのズーム
  • ハイコントラスト表示・ユーザースタイルシート

また、これら支援技術の情報は色覚多様性に配慮したWEBデザインの基本知識に詳しく載せています。

聴覚障害:音が聞こえない

聴覚障害の主な困難

聴覚障害には、まったく音が聞こえない方もいれば、高い音や小さな音が聞き取りにくい方など、さまざまな段階があります。WEBサービス利用においては、以下のような課題が発生しやすくなります。

  • 動画や音声コンテンツの情報が得られない
  • 通知音などの聴覚的サインに気づけない
  • 問い合わせが電話のみの場合、手段が閉ざされる

聴覚障害を持つ方への配慮のポイント

聴覚に障害がある方にとって、音声情報だけではWEBコンテンツの内容を把握できません。特に動画では、トランスクリプト(文字起こし)をつけることで、音の情報を視覚的に補うことができます。また、音による通知がある場合は、ポップアップやアニメーションなどを併用することも大切です。

  • 動画には字幕やトランスクリプトを必ずつける
  • 音による通知は、視覚的なアクションを併用
  • 電話以外の問い合わせ手段を含める
  • 自動再生される音声やBGMは避ける

活用される支援技術

YouTubeなど動画コンテンツでは、字幕を表示させるよう心掛けます。また、様々なコンタクトポイントを用意することも大切です。

  • 字幕表示機能/トランスクリプト提供
  • チャットボット/問い合わせフォーム
  • 通知のバイブレーション機能

運動障害:手や指が思うように動かせない

運動障害の主な困難

運動障害のある方は、手指の動作が制限されていたり、一定のスピードで操作することが難しい場合があります。マウス操作やタップなど、一般的なインターフェースが前提になっているWEBサイトでは、以下のような困難が発生しがちです。

  • マウス操作やドラッグ&ドロップができない
  • 小さなボタンが押しにくい/リンクを誤タップしやすい
  • キーボードでの操作に対応していないページはアクセス不能
  • 制限時間つきの操作に対応できない(例:ログイン時のタイムアウト)

運動障害を持つ方への配慮のポイント

WEBサイトを設計する際は、『手先の器用さがなくても使える』設計を意識することが重要で、ドラッグやスワイプなどの特殊操作は代替手段を用意する必要があります。

  • すべての操作をキーボードで行えるようにする
  • ボタンやリンクは十分な大きさを確保する(WCAGでは44px四方が目安)
  • 特殊操作は、代替手段も用意する
  • 操作に時間制限がある場合は、延長や制御を可能に

活用される支援技術

運動障害のある方は、標準的なインターフェース以外の入力方法や支援機器を活用しています。OSやブラウザによるアクセシビリティAPIを通じて動作する外部支援機器と連携出来るよう、HTMLの構造化とラベル付けはとても重要です。

  • 身体の一部で操作できるスイッチコントロール
  • 音声入力/音声コマンド
  • オンスクリーンキーボード
  • マウスキー/ジョイスティックマウス

認知障害:情報の処理や判断に時間がかかる

認知障害の主な困難

認知障害には、発達障害や学習障害、高次脳機能障害、加齢による認知機能の低下など、幅広い特性が含まれます。情報の理解・記憶・判断に時間がかかる場合や、構造が複雑なページで混乱しやすいといった困難が見られます。

  • ページ構造が複雑で、目的の情報にたどり着けない
  • 専門用語や抽象的な表現が理解しづらい
  • 情報量が多すぎて、どこを読めばいいのかわからない
  • ステップが多い操作(申請・予約など)で途中で挫折してしまう

運認知障害を持つ方への配慮のポイント

認知に不安のある方でも迷わず利用できるよう、『迷わせない』『詰め込みすぎない』『シンプルに伝える』設計が重要です。例えばナビゲーションは3階層以内にするなどし、パンくずリストで現在地を明示して直感的にWEBサイトを利用できるようにします。また、視覚的に重要箇所を目立たせ、入力フォームは 「STEP1 入力1/3 → STEP2 内容確認2/3 → STEP3 完了3/3」など操作手順はガイド付きで提供することでユーザーは安心感を得られます。

  • 構造をシンプルにし、階層やラベルは直感的に
  • 文章は簡潔に、箇条書きや見出しで視覚的に整理
  • 専門用語には補足やツールチップを併用
  • 操作の進行状況の表示

活用される支援技術

認知障害に特化した『支援ツール』は少ないですが、読み上げ・構造支援・カスタマイズ機能を組み合わせて支援する例は多く見られます。

  • 読み上げ機能(スクリーンリーダー・ブラウザ拡張):視覚と聴覚の両方で情報を把握
  • フォント・配色のカスタマイズ:自分に合った表示環境で読む(UDフォント、配色変更)
  • 構造化されたページ設計:支援技術に依存しなくても、「視覚的な整理」だけで理解しやすくなる
  • 読み上げ+画面強調のツール:読んでいる箇所をハイライト表示する拡張機能

障害の種類によって異なるユーザー体験と配慮のポイントのまとめ

障害の特性によってつまずくポイントは異なりますが、共通するキーワードは『わかりやすさ』と『代替手段の提示』です。すべてのユーザーにとって選べる手段があること、それがアクセシビリティの基本です。

私たちは、WEBサービスのアクセシビリティ対応のご相談はもちろん、御社のWEB戦略パートナーとしてお役に立てるご支援をしています。いつでもお気軽にお問い合わせください。

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