要件定義はコンセプトがあれば迷わない

要件定義はコンセプトがあれば迷わない

要件定義はコンセプトがあれば迷わない:目次

プロジェクトの核は前提条件

前提を確認(目的・背景・制約)

これまで、要件定義における「前提(目的・背景・制約)」について、プロジェクトの判断の軸として何度か紹介してきました。ここが曖昧なまま進むと、判断の基準が共有されず、設計や機能の議論が成り立たなくなります。

最初に「前提(目的・背景・制約)」を可視化し、後工程で立ち返ることのできる共通のツールとしておくことが重要です。

「前提(目的・背景・制約)」の記事をご覧いただいていない方はこちらからご覧ください。

前提条件のツール化

前提条件はプロジェクト判断の軸となります。進行中の設計や機能検討の場面では、関係者全員が立ち返ることのできる状態に置いておきます。つまり、「前提」を可視化し、プロジェクトの上位に置いて、いつでも参照できる状態にしておきます。

「前提」を可視化したものを「共通のツール」として扱い、常に参照できる形で保持しておくことで、議論の方向が共有され、判断のブレや手戻りは減っていきます。

参照物の例
  • PDF1枚(最も安定)
  • 共有ドキュメント1ページ(Notion/Docs等)
  • 提案書や要件定義書の冒頭1ページ
  • 社内Wiki/プロジェクトTOPページ

形式は問いません。関係者全員が同じ場所を参照できることが重要です。

判断の軸は前提とブランド

前提条件とブランド

前提条件は、目的・背景・制約といったプロジェクトにおける事実条件です。一方、ブランドはその企業がこれまでの活動の中で選び続けてきた価値判断の傾向です。前提条件はプロジェクトごとに変わりますが、ブランドとしての価値基準は短期間で変わるものではありません。この2つを重ねて考えることで、プロジェクトにおける判断の軸が見えてきます。

前提条件(目的・背景・制約)とブランド(価値基準)が重なることで、プロジェクトの判断の軸が形成されることを示した図

ブランドは企業活動の中にある

ブランドが明文化されていない企業は少なくありません。しかしながら、ブランドが理念やスローガンとして示されていなくても、企業は活動の中で必ず判断の傾向が現れます。

判断傾向の例
  • 何を優先してきたか
  • 何を避けてきたか
  • どのような案件を引き受けたか
  • どのような案件を断ったか

そうした選択の積み重ねが、その企業の価値基準を形づくっています。明文化されていなくても、過去の判断を振り返ることでブランドとしての判断基準を抽出することができます。

コンセプトの抽出

前提条件とブランドを重ねた状態が、プロジェクトにおける判断の軸となります。この判断の軸を見える化したものがコンセプトです。コンセプトは新しく考え出すものではありません。コンセプトはブランドの中から、前提条件に合う価値基準を抽出してプロジェクト上に配置したものです。前提条件とブランド、この2つが重なった部分を「誰もがいつでも参照できる状態」にしておくことで、プロジェクトは一貫した判断軸のもとで進みます。

  • 前提 = 状況
  • ブランド = 価値基準
  • コンセプト= 判断軸(前提+ブランド)
前提条件(状況)とブランド(価値基準)を重ねて抽出した部分が、プロジェクトの判断軸となるコンセプトであることを示した図

コンセプトで決める要件と設計

コンセプトは判断の軸

コンセプトはランドマークとなるブランドのコピーではなく、プロジェクトの前提と重ねて設計や要件の検討の中で判断が生じるたびに立ち返るための判断の軸です。

企業のブランドから価値基準を抽出し、各プロジェクトの前提条件と重ねてコンセプトとして適用する流れを示した図
  • 構成をどうするか
  • 機能を入れるか削るか
  • どこまで実装するか
  • どこで線を引くか

こうした判断の場面で、コンセプトに照らして選択することでプロジェクトがブレることなく進行していきます。

コンセプトは作った瞬間に機能するものではなく、設計・要件・運用の検討を通して参照され続けることで、はじめて判断の軸として機能します。

関係者がコンセプトという共通の判断軸を参照しながら、構成・機能・実装範囲などの意思決定を行うイメージ図

コンセプト参照でスムーズな進行

コンセプトが共有されていないプロジェクトでは、判断の軸がありません。議論は感覚論に寄り、その場の意見で方向が決まったり、関係者の立場によって取捨選択の優先順位が変わるなどします。

とくに非機能要件の検討で、その影響が顕著に現れます。

  • どこまで品質を担保するか
  • 運用負荷をどこまで許容するか
  • アクセシビリティ基準
  • セキュリティ水準の範囲
  • 将来の拡張
  • 運用統制

これらは正解が一つではなく、企業としての価値基準によって判断が分かれる領域です。コンセプトが共有されていない状態では、判断はその場の意見やコスト感に左右され、要件は膨張と修正を繰り返します。前提条件とブランドから抽出されたコンセプトが判断の軸として参照できれば、非機能要件の優先順位も一貫した軸のもとで決定されます。設計と要件の整合が保たれ、プロジェクトは迷走することなく進みます。

要件定義はコンセプトがあれば迷わないのまとめ

プロジェクトを安定して進行させるには、最初にコンセプトを見える化してプロジェクト関係者がいつでも参照できる状態にしておくことが重要です。コンセプトは、前提(目的・背景・制約)といった事実条件だけでは定まりません。企業活動の中で培われてきた価値基準、すなわちブランドを重ねることで、はじめてプロジェクトの判断の軸となるのです。

コンセプトという判断の軸が共有されていれば、機能要件や非機能要件の優先順位は一貫した判断の軸のもとで決定されプロジェクトはスムーズに進行します。要件定義とは、何を作るかを決める工程であると同時に、どの基準で判断するかを決める工程でもあるのです。

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