要件定義、どこから手をつければいい?

(2025.12.16)

要件定義、どこから手をつければいい?

要件定義、どこから手をつければいい?:目次

要件定義とは?

要件定義とは、Webサイトを作る前に「何のために、誰に、どんな価値を届けるのか」を整理し、判断となる軸を作る工程です。特に重要なのは、目的を定める〈概念設計〉、利用シーンや行動を描く〈体験設計〉、情報や機能を破綻なく組み立てる〈情報設計〉の3つの視点です。

目的と軸を定める(概念設計)

  • このプロジェクトで何を実現したいのか。
  • 判断に迷ったとき、立ち戻る基準は何か。

使われ方を描く(体験設計)

  • 誰が、どんな状況で、どう使うのか
  • ユーザーの行動や期待をどう設計するか。

情報と機能を組み立てる(情報設計)

  • 情報をどう整理し、どう見せるか。
  • 構造として破綻しないか。

これらの設計がスムーズに進むと、予算・品質・スケジュールのすべてによい影響を及ぼします。つまり要件定義とは、プロジェクトの原点であり、プロジェクト中は判断の軸であり、その後の運用までも支え続ける土台となります。

要件定義では最初に「前提」確認

要件定義で担当者が最初にやることは、後から判断に迷わないように、プロジェクトの前提を整理しておくことです。背景や目的、期限、意思決定の体制、変えられない条件が共有されていないまま進むと、途中で「話が違う」「そんな前提だとは思っていなかった」というズレが起きます。

結果として、さまざまな見直しや手戻りが発生し、予算やスケジュールに影響をおよぼします。前提を先に揃えることで判断の土台を共有でき、安心して議論を進められる、スムーズなプロジェクト運営につながっていきます。

前提条件を決めているイラスト

プロジェクトの背景

プロジェクトの背景は、要件定義の方向性を決める重要な前提となります。例えばWebサイトの老朽化、組織の制度変更による大幅な更新、旧システムによる業務負荷の増大など、その背景はさまざまです。

ユーザーからの指摘や組織改編が背景にある場合もあり、何が発端かによって、優先すべき判断は変わります。プロジェクトに取り組む理由をステークスホルダー間で共有できれば、後の議論での判断がブレにくくなります。

確認ポイント
  • どんな課題や出来事が発端になったか
  • 今やらなければならない理由は何か
  • 見送った場合に、どんな影響があるか

ここを曖昧にしたまま進めると、「本当にそこまでやる必要ある?」「なんでこれしかやらないの?」といったズレが、後工程で表面化します。

目的の見える化

判断の優先順位を決めるために、まずプロジェクトの目的を明確にします。目的が曖昧なままだと、「機能」「デザイン」「運用」など、議題が変わるたびに判断基準が変わり、「それも必要」「これも大事」と話が膨らみ続けてしまいます。最初に目的を言語化(可視化)しておくことで、何を優先し、何を後回しにするかを冷静に判断できるようになります。

確認ポイント
  • プロジェクトで最も達成したいことは何か
  • 成功したと判断できる状態はどんなものか

目的を明確にしないままプロジェクトを進めると、「思っていた成果と違う」「なぜこの判断になったのか分からない」といった不満が後から出やすくなります。目的の言語化(可視化)は、関係者全員が同じゴールを見て進むための共通言語をつくる工程です。

期限と意思決定

プロジェクトを進めるうえで、期限と意思決定について決めておくことは非常に重要です。「いつまでに何を決める必要があるのか?」「誰が最終判断を行うのか?」が曖昧なままだと、議論が進んでも結論が出ず、判断が先送りされてしまいます。いつまでに誰が決定するのか?を共有しておくことで無駄な停滞や手戻りを防ぐことができます。

確認ポイント
  • いつまでに決める必要があるか
  • 最終的な判断を行うのは誰か
  • 確認・合意が必要なポイントはどこか

ここを整理しないまま進めると、「まだ決めなくていい」「誰の判断なのか分からない」といった状態が続き、結果としてスケジュールがずれ込んでいきます。期限と意思決定の前提を押さえることは、判断を前に進めるための環境づくりでもあります。

変えられない条件(制約・ルール)

プロジェクトを進める前に、あらかじめ変えられない条件を整理しておくことも重要です。法令、組織のルール、既存システムとの関係など、後から覆せない前提があるにもかかわらず、それを共有しないまま進めると、「それはできない」「最初に言ってほしかった」という衝突が起きます。最初に制約を見える化しておくことで、現実的な判断ができ、無駄な検討や手戻りを防ぐことができます。

確認ポイント
  • 法令・ガイドラインなど、必ず守る必要があるものは何か
  • 組織や運用上のルールで変更できないものは何か
  • 既存システムや他施策との関係で制約になる点は何か

ここを曖昧にしたまま進めると、「理想は分かるが実現できない」「結局元に戻すことになった」といった事態が起こりがちです。変えられない条件を先に押さえることで、実現可能な条件のみを揃えることができます。

前提として確認しておきたいこと

  • なぜ今、このプロジェクトに取り組むのか?
  • 何を最優先の目的とするのか?
  • いつまでに、誰が判断するのか?
  • 変えられない条件や制約は何か?

要件定義の進め方

ビジネスパーソンが要件定義を進めている様子

対象の調査・分析

前項(前提の確認)で整理した背景や目的を踏まえ、対象のWebサイトや業務の現状を確認します。現行Webサイトの構成、運用状況、利用実態などを整理し、「今の状態が目的に対してどうなっているか」を把握します。対象の調査・分析では新しい結論を出すのではなく、新たに判断の材料を揃えることが目的です。

確認ポイント
  • 現行サイトはどのような構成・規模になっているか
  • どの情報やページがよく使われているか
  • 目的に対して機能していない点はどこか

業務フローの確認

ユーザーや運用担当者が実際にどのような流れで作業しているかを確認します。誰が、どの場面で、何に困っているのかを整理することで、表面化していない課題や、Webサイトで解決できるポイントが見えてきます。

確認ポイント
  • ユーザーはどのような手順で情報にたどり着いているか
  • 運用担当者はどの作業に負荷を感じているか
  • Webサイトが業務の妨げになっている箇所はないか

段取りの整理

要件定義では、決める順番も重要です。目的や前提が固まらないまま細かい仕様を議論すると、判断が迷走します。何を先に決め、どこで関係者の合意を取るのかを整理し、判断が詰まらない進め方を設計します。

確認ポイント
  • 最初に決めるべき項目は何か
  • 途中で合意が必要なポイントはどこか
  • 後工程に回してよい判断は何か

機能要件の洗い出し

前提や調査結果を踏まえ、Webサイトに必要な機能を整理します。「やること」だけではなく、「やらないこと」「今回対象にしないこと」も明確にすることで、検討範囲を適切にコントロールすることができます。

確認ポイント
  • 今回の目的達成に本当に必要な機能は何か
  • 無くても成立する機能はどれか
  • 将来対応として切り分ける機能は何か

非機能要件の洗い出し

アクセシビリティ対応や情報構造、表現ルールなど、Webサイト全体の品質に関わる部分やサイト運用や将来の拡張に関わる部分を整理し、「どこまでを対象とするのか」「何を基準に設計・判断するのか」を明確にします。

確認ポイント
  • アクセシビリティ対応の範囲と考え方
  • 情報構造や表現ルールで揃えるべき基準
  • CMS入力時に守るべきルールは何か

最終的な合意

要件定義の最後に、ここまでに決めた内容を関係者間で共有し、「どこまでを合意事項とするか」を明確にします。すべてを決め切ることが目的ではなく、判断の前提と範囲を揃えた状態で次の工程へ進むことが重要です。

確認ポイント
  • 合意済みの項目と未決定の項目は何か
  • 次工程に引き継ぐ前提条件は何か
  • 関係者間で認識のズレは残っていないか

要件定義、どこから手をつければいい?のまとめ

要件定義の出発点は、「前提」を整理し、プロジェクトメンバーで共有できる判断軸を整えることです。あわせて、概念設計・体験設計・情報設計という3つの視点を持ち、要件定義をどの順番で進めるのか?(現状把握→業務の確認→段取り→機能要件→非機能要件→合意)プロジェクトの全体像を整理します。これにより、プロジェクト関係者が共通の前提で議論できる状態となり、さまざまな要件を検討していくための軸ができます。

一方で、要件定義を成立させるためには、このページでは扱っていない要素もあります。具体的には、コンテンツの量や構成規模、運用の前提など、見積もりや進行に直接影響する項目です。これらについては、また改めて別の記事にてご紹介いたします。

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