KNOWLEDGE K2@WEB相談室
『プロジェクトにアクセシビリティを組み込むワークフロー設計』について紹介
『プロジェクトにアクセシビリティを組み込むワークフロー設計』について紹介
(2025.6.23)
私たちは「人」を中心にしたクリエイティブを企業アイデンティティとし、WEBアクセシビリティ対応をご支援しています。すべての人にとって心地よく使えるWEBサービスを目指し、豊かなユーザー体験でビジネスの可能性を広げ、誰もがつながる未来を創造します。
アクセシビリティを意識した設計は、本来プロジェクトの初期段階から取り組むものですが、実装直前や公開直前になって慌てて対応するケースも少なくありません。限られた予算やスケジュールの中で、無理なく進めるためには、アクセシビリティをワークフローにあらかじめ組み込んでおくことが重要です。
画像に設定するalt(代替テキスト)は、見えない人への情報提供としてとても大切です。ただの説明ではなく、「何を伝えたい画像なのか」を意識することがポイントです。装飾的な画像は空欄でOK。適切なaltは、支援技術でも検索エンジンでも正しく伝わります。
WEBサイトやアプリの制作では、「ブランド訴求」や「課題解決」「UI/UXの最適化」など、複数の目的が並行して進行します。アクセシビリティも、そうした目的のひとつとして初期段階から意図的に設計に組み込むことが重要です。
アクセシビリティを特別な対応として切り離すのではなく、プロジェクトの進行軸に沿って自然に意識される“共通の価値観”として位置づけることで、チーム全体に無理なく浸透させることができます。
現時点の制作現場では、初期段階で明確なリクエストがない限り、アクセシビリティは“特別な技術対応”あるいは“誰かの担当”として扱われ、後回しにされやすい傾向があります。ですが、最初に「このプロジェクトは、誰にとっても使いやすくあるべき」という価値観をチーム内で共有しておけば、以下のような効果が期待できます。
色を選ぶとき、文言を書くとき、マークアップするとき、それぞれの判断にアクセシビリティの視点が入り込むことで、たとえデザインシステムが整っていなくてもバラバラな解釈が生まれにくくなります。
成果物に対しての責任分散ではなく、“共通の視点”としてチーム内に根づくことで、「あの人がやるんでしょ」という人任せな判断が減り、自分の作業にどう組み込むかを各メンバーが主体的に考えるようになります。その結果、作業の積み残しが減り、連携もスムーズになります。
アクセシビリティを後から付け足すのではなく、最初から設計に含めておけば、後戻りや余計な手間が減り、全体の作業効率が上がります。
アクセシビリティの取り組みは、特定のフェーズや特定の担当者だけで完結するものではありません。企画から情報設計、デザイン、実装、検証、公開・運用まで、プロジェクトの全体を横断して関わる視点です。各フェーズで関係者それぞれが担うべき役割を持ちつつも、共通の目的としてアクセシビリティが“流れている”状態をつくることが、後戻りのない自然な設計と対応につながります。
目的/工程 | 企画・要件定義 | 情報設計 | デザイン | 実装・開発 | 検証・確認 | 公開・運用 |
---|---|---|---|---|---|---|
ブランディング | ブランド価値・世界観の共有 | 表現トーンに合った構造設計 | 配色・フォント・写真の印象調整 | UIとの整合性を意識した再現 | トーンのぶれ/印象ズレの確認 | 表現の維持・ガイドライン整備 |
課題解決 | ターゲットの課題・行動の言語化 | ペルソナ別の導線・情報配置設計 | UIパターンで課題解消を支援 | 機能や導線の精度調整 | 離脱要因・動線エラーのテスト | アクセス解析による再改善 |
UX設計 | 体験全体のシナリオ設計 | 直感的な構造・階層の計画 | インタラクション・状態設計 | 操作感・アニメーションの最適化 | ユーザビリティテスト | フィードバック反映/運用改善 |
UI設計 | 情報設計フェーズ以降を見据えたUI要件の整理 | モジュール設計・UI構造の骨組み | UIコンポーネント/状態変化のビジュアル設計 | 実装ルールとのマッチング | UIコンポーネントの動作確認 | デザインシステムによる保守 |
アクセシビリティ | 対象ユーザー・利用環境の想定 | セマンティック構造/読み順設計 | 色覚配慮/視認性・余白設計 | 意味あるマークアップ/ARIA設計 | 音声読み上げ・操作性の検証 | 継続的な改善/支援ツール活用 |
先ほどの表でも示したとおり、アクセシビリティはプロジェクトの各工程において、判断や設計の中に一貫して存在している必要があります。そのためには、単に「配慮する項目をチェックする」のではなく、誰が・いつ・何に対して判断するのかをあらかじめ設計し、プロジェクト全体に“縦軸”として流す必要があります。
例えば、色設計はデザイナーが主導しますが、情報設計の段階で対象ユーザーや文脈を踏まえていることが前提です。さらに実装フェーズでは、構造や操作性が担保され、検証フェーズではその効果が確認されます。こうした連動があることで、アクセシビリティは流れの中で自然に成立していきます。
アクセシビリティを確実に実装するには、「誰が(担当)」「いつ(フェーズ)」「何を(判断・作業)」するのかを明確にしておく必要があります。これは作業の属人化を防ぎ、流れの中でアクセシビリティ対応を機能させるための基本設計となります。
アクセシビリティ対応とは、チェックリストを見ながら後から項目を埋めていく作業だけではありません。重要なのは、各工程の中で自然に判断が生まれるように“判断の流れ”をつくることです。それが設計のゴールとなります。
企画や情報設計で考えた配慮が、デザインや実装、検証にきちんと引き継がれていく設計が必要です。これができていないと、「デザイナーの意図と実装がずれる」「検証段階で初めて気づく」といった手戻りや、チーム内での認識の分断が生じてしまいます。
プロジェクト全体の方針を定め、関係者をつなぐ橋渡し役です。誰に向けて、どんな配慮が必要かを要件に落とし込み、企画・デザイン・実装の各フェーズで共通の判断基準として共有します。アクセシビリティを“目的のひとつ”として位置づけ、プロジェクト内に自然に組み込む視点が求められます。
視認性や操作性に配慮した設計を行います。色のコントラスト、文字サイズ、余白、情報の並び順など、デザインのあらゆる要素がユーザーの可読性や判断のしやすさに影響します。特に「状態の見え方(フォーカス・エラー表示)」など、実装前の設計段階での配慮が重要です。
意味のあるマークアップ、適切なARIA属性、キーボード操作への対応など、構造と操作性の面でアクセシビリティを支えます。CMSやフレームワークの制約を考慮しながら、プロジェクト初期から技術的観点での設計相談ができる体制が理想です。読み上げ対応の確認やテスト自動化も担います。
読みやすく、構造化された文章を設計することで、情報が誰にでも伝わる状態を目指します。見出しやリストの使い方、代替テキストの記述、やさしい言葉選びなど、アクセシビリティを“表現の力”で支える役割です。
音声読み上げやキーボード操作など、支援技術を用いた実機検証を行います。自動チェックツール(axe、Lighthouseなど)に加え、ユーザー視点の確認が求められます。設計意図とのズレを早期に発見し、改善提案につなげる役割も担います。
アクセシビリティの品質は、プロジェクトの各工程でどれだけ意識され、どう判断されたかの積み重ねで決まります。ワークフローに設計として組み込んでおけば、誰かの属人的な配慮に頼らず、工程ごとに必要な観点が抜け落ちることなく反映されます。結果として、全体のクオリティが底上げされ、安定した成果物につながります。
アクセシビリティ対応を後から加えようとすると、デザインや実装のやり直しが発生しやすく、工数とコストが増大します。初期段階から判断・確認ポイントを設計に落とし込んでおけば、対応がスムーズになり、後戻りのない進行が可能になります。限られた予算やスケジュールの中で最大のパフォーマンスを発揮するには、流れの中に組み込む仕組みが不可欠です。
ワークフロー設計は、特定の担当者だけに頼らない“再現可能なプロセス”を生み出します。プロジェクトが変わっても応用できる仕組みになり、属人化を防ぎながら、社内の知見として蓄積されていきます。また、教育やチーム体制づくりにも活かすことができ、アクセシビリティを一時的な取り組みではなく“継続的な取り組み”として育てる基盤になります。
アクセシビリティは、特別な知識や専門的なツールだけで実現するものではありません。プロジェクトの中に“自然に流れる視点”として組み込まれていれば、無理なく、抜けなく、チーム全体で支えることができます。そのために必要なのが、最初からアクセシビリティを前提にしたワークフロー設計です。誰が・いつ・どの場面で配慮を判断するのか。その流れを設計することで、品質と効率の両立が可能になります。
また、この設計は一度整えれば再利用もでき、組織全体の基盤にも育っていきます。“誰かのがんばり”に依存する時代から、“仕組みで支える体制”へ、今からできる小さな設計改善が、未来のアクセシビリティを支える力になります。
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