アクセシビリティチェック 自動と手動の最適解

(2025.7.7)

アクセシビリティチェック 自動と手動の最適解:目次

自動テストで“速く・広く”アクセシビリティチェック

アクセシビリティ対応の第一歩として、多くの現場で導入されているのが自動テストツールです。HTMLの構造やラベルの有無、コントラスト比など、機械的に判断可能な項目を短時間で広くチェックできるのが最大の特長です。

よく使われる自動チェックツール

axe DevTools(Chrome拡張)

開発者向けで、特にリアルタイムでの修正作業に適しています。技術的なレポートと修正方法を提示してくれるのでコードレベルでの確認ができます。

WAVE(Web Accessibility Evaluation Tool)

ビジュアル的なフィードバックが得られ、非開発者やデザイナーが直感的に確認するのに適しています。サイト全体の色・コントラスト・ラベルなどの評価ができる初学者にもおすすめのツールです。

Lighthouse(Chrome DevTools内蔵)

アクセシビリティを含む複数のWeb指標を一括評価してくれます。Webサイトをレポート形式で評価してくれるので結果をチームで共有して改善に役立てることができます。

W3C HTML Validator

HTMLの構文チェックツールとして知られていますが、alt属性の有無やラベルの不足など、アクセシビリティに関わる構造的な不備を検出できます。内容の妥当性までは判定できないものの、初期段階での重要なエラー発見に役立つツールのひとつです。

関連リンク

W3C HTML Validator

自動チェックで検出できる主な問題

自動チェックは、alt属性の欠如、ラベル未設定の入力欄、テキストや役割のないボタン・リンク、不適切なコントラスト比、見出し階層の不備など、機械的に検出可能なアクセシビリティ上の問題を洗い出すことができます。

  • 画像に alt 属性がない
  • 入力欄にラベルがない/関連付けが不適切
  • ボタンやリンクにテキスト・役割がない
  • コントラスト比が基準を満たしていない
  • 見出しの順序が不適切(例:h2 の次に h4)

例えば、<img src="..." alt=""> のように alt 属性が空欄であっても、構文としては正しい記述です。これは装飾目的の画像や、意味を持たせる必要がない場合に適した指定であり、スクリーンリーダーに読み飛ばしてもらう意図として有効です。ただし、本来伝えるべき情報を持つ画像にまで alt="" を使ってしまうと、アクセシビリティ上の問題になります。こうした「適切な内容になっているかどうか」までは、どのツールも自動では判定できません。

自動チェックの限界と、次の一手へ

自動チェックでは検出できない課題も多く、文脈に合ったalt内容や具体的なラベル、自然なフォーカス移動、スクリーンリーダーでの読み上げ順の適切さなどは、人の目と感覚による確認が必要です。

  • alt の内容が画像と合っているか
  • ボタンやリンクのラベルが具体的か
  • フォーカスの流れが自然か、迷わず操作できるか
  • スクリーンリーダーでの読み上げ順や意味の伝わり方

こうした体験に関わる要素の検証には、手動による確認が不可欠です。自動テストは、アクセシビリティ対応の“土台”を固めるための強力な味方ですが、それだけではアクセシビリティ対応されているか判断できません。次のセクションでは、見逃しを拾い、使いやすさを仕上げる“手動テスト”の重要性を紹介します。

隙の無いアクセシビリティ対応は手動テストで“見逃しチェック”

自動テストで多くのエラーは拾えますが、それだけで“完璧”とは言えません。意味や文脈、操作感といった「人にしか判断できない部分」は、自動では検出できないからです。そこで重要になるのが、手動によるアクセシビリティチェックです。実際に「使ってみる」「読んでみる」ことで、“技術的にはOK”でも伝わらないUIやコンテンツを見つけることができます。

手動でしか気づけないチェック項目

手動チェックでは、alt属性の内容が画像に合っているか、ラベルが具体的か、キーボード操作がスムーズか、フォーカス順が自然か、aria属性が正しく機能しているかなど、人の目と操作による確認が不可欠なポイントを見つけられます。

  • 画像のalt属性の“内容”が画像と合っているか
    例:人物写真に「イベント写真」とだけ書かれていても、情報が曖昧すぎてスクリーンリーダー使用者には理解できない場合もあります。
  • ボタンやリンクのラベルが“役割や動作”を明確に伝えているか
    「こちら」や「もっと見る」では、スクリーンリーダー使用者には意味が伝わりません。
  • キーボードだけで操作できるか(Tabキーで遷移、Enterで実行)
    フォーカスが飛ばなかったり、戻れなかったりするUIは意外と多いです。
  • フォーカス順序が自然か
    レイアウト上の配置と実際のフォーカス順にズレがあると、混乱の原因になります。
  • aria-label や role 属性が正しく機能しているか
    実際にスクリーンリーダーで読み上げてみないと、誤解を招くケースもあります。

手動テストに使える手段・ツール

手動テストでは、Tabキー操作やスクリーンリーダー(NVDAやVoiceOver)による読み上げ確認、画面拡大・配色反転などを活用し、実際の操作感や視認性を検証します。想定ユーザーになりきる・声に出して読む・他者に操作してもらうことで、見落としがちな課題にも気づけます。

  • Tabキーでの操作チェック
    キーボードだけでフォームの入力・送信、ボタン操作が完結するかを確認できます。
  • スクリーンリーダー
    読み上げの順序・文脈が不自然になっていないかチェックできます。
    - Windows:NVDA(無料) - macOS/iOS:VoiceOver(標準搭載)
  • 画面拡大や配色反転での視認性チェック
    視覚特性の異なるユーザーの閲覧環境を疑似体験できます。

実務でのチェック方法のヒント

実務でのアクセシビリティチェックでは、視覚制限のあるユーザーになりきって操作する、見出しやリンクを声に出して確認する、他者に説明なしで操作してもらうなどの工夫で、実際の使いにくさや見落としを発見できます。

  • 想定ユーザーになりきって操作してみる
    例:視覚に制限があるユーザーとして、キーボードだけでフォーム送信まで行けるか?チェックします。
  • 説明なしで他人に操作してもらう
    社内で簡易ユーザーテストを実施すれば、想定外の詰まりポイントが見えます。

アクセシビリティとは、技術の問題であると同時に“配慮の設計”でもあります。だからこそ、人の感覚でチェックすることが不可欠といえます。次のセクションでは、自動と手動をどう組み合わせるべきか?そのベストバランスを解説します。

自動×手動の組み合わせがアクセシビリティの最強コンボ

アクセシビリティ対応を確実に進めるうえで、自動テストと手動テストのどちらか一方だけでは不十分です。それぞれに得意・不得意があり、補完し合うことで初めて“実際に使いやすい”Webが実現します。

自動テストは、構文上の不備やラベルの欠如、コントラスト比の問題など、定量的なチェック項目を短時間で網羅できるのが特長です。一方、手動テストでは、スクリーンリーダーでの読み上げ結果、操作の流れ、UIの直感的なわかりやすさなど、人の感覚に依存する項目を確認できます。

特徴を比較
チェック手法 得意なこと 苦手なこと
自動テスト HTML構造の誤り検出、ラベルの欠如、色のコントラスト不足など 内容の妥当性、文脈の自然さ、UIの操作感など
手動テスト 意味の伝わり方、フォーカス順序、スクリーンリーダーの読み上げなど 検出範囲が膨大な場合、人的リソースが必要

このように、それぞれの特性を理解しておくことで、無駄なく効率的なアクセシビリティ対応が可能になります。

実務での組み合わせ方

実務では、自動テスト(axeやWAVE)で早期にエラーを発見し、リリース前に手動チェックで操作性や読みやすさを確認。さらに、WCAGや環境の変化に対応するため、ツールや運用フローを定期的に見直すことが重要です。

  • コーディング段階でaxeやWAVEなどの自動テストを実施
    エラーの早期発見と、構造的な問題の修正に効果的です。
  • リリース前に手動チェックを追加
    キーボード操作・スクリーンリーダー・文章の読みやすさなど、「使う人の体験」を確認します。
  • 定期的にツールや運用フローを見直す
    WCAGのバージョンアップやブラウザ環境の変化に合わせ、継続的な改善体制を整えます。
自動×手動を組み合わせ例
  • 例1:コーディング時にaxeで自動チェック → 実装中に構造的なミスを早期発見
  • 例2:WAVEでレイアウトと構造の視覚的確認 → 見出しの抜けや順番の確認に有効
  • 例3:本番前にキーボード操作+NVDAで手動確認 → 実際のユーザー視点で体験を検証
  • 例4:運用フェーズで、エラー報告やフィードバックをトリガーに定期的な再確認

こうしたプロセスを業務の一部として自然に組み込んでおくことで、特別な負担なくアクセシビリティ品質を維持できるようになります。

よくある誤解:「自動ツールでチェックしてるから十分」

これは多くの現場で見られる誤解です。ツールのチェックで“エラーなし”と出ても、それは「完璧」という意味ではありません。あくまで「技術的なエラーが見つからなかった」というだけであり、伝わりやすさ・使いやすさは別次元の評価軸です。自動と手動、二つのチェックを組み合わせることで初めて、技術面とユーザー体験の両立が可能になります。

アクセシビリティの自動と手動、それぞれを「別の方法」として切り分けるのではなく、一つの“連携したチェック体制”として設計することが、持続可能で信頼性の高いアクセシビリティ対応につながります。すべてのユーザーにとって使いやすいWebは、こうした小さな積み重ねの先にあります。

誰にとっても使いやすく、安心して利用できるWebを目指すなら、この「最強の組み合わせ」を、今こそ実務に取り入れていきましょう。

アクセシビリティチェック 自動と手動の最適解のまとめ

アクセシビリティ対応においては、自動テストと手動テストの両方をバランスよく取り入れることが重要です。自動テストは、構文やルール違反といった明確な不備を効率的に見つけるのに適しており、手動テストは、実際のユーザーの操作感や意味の伝わり方を確認するために欠かせません。それぞれのツールや手法に特性があるからこそ、片方だけではカバーしきれない領域があることを忘れてはいけません。

「アクセシビリティに取り組む=特別なこと」と捉える必要はありません。できるところから少しずつ、チェック項目を日常の業務に組み込んでいくことで、すべてのユーザーにとって“やさしく、わかりやすい”Webは、確実に近づいていきます。

ツールを正しく使い分け、技術と配慮を両立させる、それが、これからのWeb制作に求められる姿勢です。

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